伊藤真の考え抜く力 レビュー」

伊藤真の考え抜く力 レビュー」

伊藤真の考え抜く力では、思考力を鍛える90のメソッドとあり、考えることが成功の秘訣であると説いている。変化の現代において、模範解答ではなく徹底的に考えて解答を自ら創りだせるかという現実突破能力が求められる。最後まで考えた人と途中で諦めた人には雲泥の差があるという著者の意見には、考えさせられるものがある。
本書は、格言集に近いが、その一言で纏めた要点を論理的に説明している。また、「つまり」が文の半分より前に来る法学部出身特有の書き方と直後のbecause ofで論理的に説得している。

はじめに
自分を成長させる学問的思考と何らかの課題を解決するための目標突破型の思考双方が必要。答えのない問題に自分なりの解答を見つけて前進する方法論が求められている。この考える力こそが、勝者と敗者を分ける。

1「いつも考えるを意識せよ」
自分の頭を使って考えるしか現実社会を突破する手立てがない。これが現実問題解決能力になる。考えることで可能性を広げ選択肢をが多彩になる。無駄でも徹底して考えるしかない。情報化社会で氾濫する情報取捨で生き方が確立される。考えない行動は非常に危険で、将来を見失う。安易な答に飛びつくな。新しい答えを作りだせる人が成功する。考えることで手を抜くと、分かったつもりとなり、結局は、本当に正しいのか、という問いに自論を展開できない。

2「シンプルに考える癖(クセ)をつけろ」
考えたことが自分の糧になる。理解→記憶→考える→表現するという流れで考える道標が必要で、自分なりの理解が肝要。そこで法律の例では、先人の考えを理解する。悲観的に準備して、楽観的に行動する。仮にこうなれば、こう行動する、最悪の場合は、こう準備して置くなど前もってリスク対処も考えから生じる。問題は5W1Hで明確にして考える。難しい問題はシンプルに考える。普遍的な答えなど存在しないと考える。目の前の現象に常に疑問を抱く。疑問は即座にメモする。

3「論理的な思考をすっ飛ばすな」
法的思考力は、あらゆる問題の突破口を開く。様々な角度から複眼的に物事を見る。突破口が開けないのは、視野が狭い証拠。考える力で重要なのは、事実・論理・言葉で、データは必ずしも事実とは限らない。言葉にする作業で事実と論理を切り離す。一般的な常識を鵜呑みにしない。事実は自身の判断基準で決まる。迷った時は、原理原則へ帰れ。大原則はどんなことがあっても貫き通す。必要なら大原則以外のものは躊躇なく変える。どんな反論も退けられるのが「大原則」。世の中の理屈を検証する。二項分割で数学的に考える。難しい問題は図解で考える。時間的な軸や空間的な軸で思考の幅を広げる。複合的な問題は個別に解決する。言葉の意味を正確に捉える。言葉の定義で問題の本質が変化する。対象となる言葉の反対語や類義語まで調べる。自問自答を繰り返して常識を疑う。ゼロから考えずに規則性や法則性見つけていく。合理的だけではなく人道的な側面から考える。あらゆる問題の答えは決して一つではない。

4「ベターな判断でスピードを上げろ」
視点を高いところに置き、全体を見渡す。思考の筋道がわかれば修正も早くできる。目的を考えて相応しい答えを選ぶ。選択肢は1つではなく3つ用意しておく。2つの事柄の関連性で頭を鍛える。素早く解決する問題には、締め切りを設けよ。優先順位は点数をつけて考える。自分の選択基準大切にする。迷った時は直感を信じて行動する。どんな場合でも考えずに行動してはいけない。自分の思考に偏りがあることを知る。偏った情報収集は判断ミスの原因。失敗例は必ず記憶する。意見が違う人物を否定するな。自分の弱点は冷静に把握。他人に自分の悪い点を指摘してもらう。自分の長所を磨け。短所も味方次第では長所。仮説を立てる前に目的を確認する。奇策に走らず基礎を徹底的に身につける。

5「わかりやすさで結果を出せ」
伝わらなければ、考えは実現しない。相手が論理で理解できるように伝える。相手の反応を確認しながら説明せよ。余談や雑談も話す武器になる。言葉は正確に、聞く相手に誤解されないように。交渉に勝つには相手を知る議論とは一緒に考える場。メモを取りながら真剣に相手の話を聞く。分からないことは、分からないという。文章は書く前の構成で決まる。言いたいことはなんなのか、そこだけ絶対に押さえる。長い文章は全体の設計図をわかりやすく。オリジナリティは自身の原理原則。言葉だけでは理解されない行動で示せ。

伊藤塾塾長の伊藤真氏と自分の憲法観は真逆であるが、基本の基礎は同じくである。こうした自分と異なる意見の相手と議論する際には、孫子の兵法ではないが、敵を知り己を知れば百戦危うからずであり、相手を知ることから始める必要がある。また、仕事における優先順位や、書くことを生業としている自分には、締切を設けることや、文章構成、何が言いたいかなど、示唆に富んだ内容だった。思想は違えど、優秀な相手から学べるものは貪欲に学ぶべきであり、伊藤真の思考法は、私にとって有益となるように心掛ける。

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